ヨーロッパ鉄道周遊(5) Venezia-Vienna Express(2015.03.01-02)

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ユーロスプリンターが率いる国際夜行列車

2015.03.01→03.02

Venezia S. Lucia 2057 → Wien Meidling 741

EN 236 Venezia - Vienna Express

 

車中泊

渡航後の5日間はイタリアを周遊したわけだが,これからオーストリアへ入り,その後は東欧圏を巡っていく.ウィーン(Wien)までは寝台特急に相当するユーロナイトに乗車.後日,プラハ(Praha)からケルン(Köln)まで乗る列車も含め,国際夜行列車は本旅行のハイライトの一つに数えられる.今となってはシェンゲン協定下でヨーロッパ諸国の国境も日本でいう県境くらいの感覚へと変容しつつあるのだろうが,それでもなお,陸路で国境を越える経験というのは,島国で生まれ育った身にとってはいつも非常に新鮮なものなのだ.

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多彩な客車が連なる

EN 236列車はまたの名をVenezia-Vienna Expressといい,イタリアの最北東部へ向かうポンテッバナ(Pontebbana)線でオーストリア国境を越え,フィラッハ(Villach)やザルツブルク(Salzburg)を経由し一晩かけてウィーンまでの635kmを結ぶ.見たところ,オーストリア連邦鉄道(ÖBB)のほかドイツ鉄道(DB)の客車も混結されているようだ.車内設備は多彩で,座席車からクシェット(今はなきJRのB寝台に相当),個室寝台まで色々な客車が連なっており,プラットホームを歩きながら眺めるだけで面白い.わが国ではとうの昔に失われた光景である.

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重厚感のある客車群.個室にはウェルカムドリンクが置かれていた

今回手配したのは2人用の個室寝台.室内には洗面台もあり,かつての北斗星のツインデラックスに相当する設備である.夜間帯はソファがベッドに早変わりし,壁面に格納された上段ベッドも展開される.いつの間にか,列車は音もなく滑り出していた.サンタ・ルチア駅の構内がゆっくりと後ろへ過ぎ去ってゆく.この瞬間,日本国内でも幾度となく経験したが,やはり格別である.

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日付の変わる頃,列車は国境の駅に停車した

列車は宵闇をひた走り,出発から3時間ほど経ったところで,タルヴィジオ・ボスコヴェルデ(Tarvisio Boscoverde)という国境の駅でしばしの停車がある.駅に人影はなく,見たところ乗降客もいないようだ.時刻表を下調べしてあったとはいえ,カメラ一台だけを持って深夜の異邦に置き去りになるのはさすがに厳しいので,万一に備えパスポートを携行して長時間停車中の撮影に取り組む.峠が近いのか,ホームの端には残雪があった.

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かなり標高を稼いだのか,ひんやりとした空気に包まれる深夜の駅

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ウィーンへの道のりはまだ長い
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乗客はみな寝静まっているようだ

同駅を発車後,眠りについた.疲労がたまっていたのか途中で起きることなく,目が覚めると終着ウィーンまで1時間あまりを残すのみとなっていた.気が付くと異邦の地を走っているというこの感覚.航空機では決して味わうことのない,鉄道ならではの旅の醍醐味である.簡単な朝食,といってもなかなかのボリュームがある食事が配膳された.パンをかじりながら窓外に目をやると,今日は曇り空のようだ.

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夜行列車での目覚め

地下鉄との乗換の都合上,中央駅の一つ手前のウィーン・マイドリンク(Meidling)駅で下車する.長距離列車から降り立ち,通勤客の雑踏に紛れてスーツケースをごろごろと転がしながら,新しい一日が始まろうとしている.

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ウィーン・マイドリンク駅の光景

国境を越えてドイツ語圏に入ってから一つ思うこととして,どうもイタリアに比べて「ちゃんとしている」というか「きちんとしている」というか,まあ一言で表すなればそういった雰囲気を随所に感じるのだ.このユーロナイトの運行はÖBBが受け持っているようだが,車内には各停車駅の発着時刻や,接続列車の案内までびっしりと記されたパンフレットが置いてあるし,駅に到着する前の放送もしっかり行われている.もちろん,陽気で楽しく,ある種テキトーなイタリアを否定するわけではないが,国際列車で一晩を過ごすだけでも国民性や気質の違いが何となく見えてきて実に面白い.

 

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