さらば九州ブルトレ(1)(2009.03.13)

特急富士・はやぶさは今宵の最終列車をもって運行を終了する.高速化,効率化の時代にあって,旧態依然たる寝台特急は競争から取り残された.最後の九州行の列車が,ひっそりと姿を消そうとしている.

旅の序章.夕刻の10番線は凄まじい人出で,異様な空気に包まれている.大勢の人が待ち構える中,ほどなくして富士・はやぶさはホームに入線してきた.夕方になると幾多もの寝台特急が東京駅から続々と西へ旅立つ時代もあった.しかし,この駅でブルートレインを目にすることが出来るのも今日限りである. 

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最終日の東京駅10番線

時間はあっという間に過ぎる.多くの人が別れを惜しんでいる.やがて発車時刻,18時03分を迎えた.長い発車メロディが流れる.群衆に見守られる中,車掌は窓から身を乗り出し,扉を閉める.機関士と無線で交信し,やがて青い客車はゆっくりとホームを滑り出す.発車.「ありがとう」「さようなら」の声があちこちから飛び交い,拍手が湧き起こる.最終列車,東京を出発.九州までの最後の道のりが始まった.

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最終列車乗務の任に就く.手紙を受け取ったのだろうか
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動画キャプチャより.閉扉,そして機関士との無線交信の数コマ

東京1810 → 新山口2237

東海道・山陽新幹線51A のぞみ51号 785-20

私は帰らない.後続の新幹線で西へ先回りする.後期試験を放棄したこの日は,私自身の旅立ちの日でもある.富士・はやぶさのラストランの日が,新たな一歩を踏み出す日となることを願い,思考を整理するための旅行という意味もこめて,今回は,最終列車を九州まで追跡する.

新幹線といえども新山口まではおよそ4時間半もの長旅で,さすがに疲れる.夜の町には静かな雨が降っていた.駅前の東横インに一泊する.

 

この記事は,過去の紀行文を加筆修正したものです.