羽越本線の名優,最後の勇姿(2015.05.30)

旅の記録が追い付いていない。集計したところによると,2015年4月以降,いまだ記事になっていない旅が少なくとも11は存在することが分かった。そのうち一部はSNS上で発表済であり,写真の選定や修整が終わったものも含まれる。しかし改めて見返してみると,当時から感性が成長したのか変質したのかはともかく,新たに盛り込みたい写真や,試みたい表現が次々と出てきた。まずは,それらをまとめるだけでひと仕事である。それと,旅を記録に残すからには旅程の記載は欠かせないという妙な信念が昔からあるのだが,驚いたことに旅程が残っていないものが多いことも判明した。LINEのトーク記録などを掘り起こしつつ,可能な範囲でなんとか再現を試みたが,結局何を食べたのかとか,どの列車に乗ったのかなどを思い出せない空白がいくつも生まれつつある。一方で,前回の随想の中では手術室の窓を開けるのにたいそう難儀する(日常の合間を縫うようなブログの更新が全く捗らない)という話が出た。結局のところ,旅程をまとめるとか,かしこまってあれこれ文章を考えるとか,そういう手間をかけすぎていたのかもしれない。もっと端的に,簡潔に,直感的に,SNSのアルバムを作るみたいにただ写真を貼り付けてみるという試みはどうだろうか。

f:id:tnclog:20220407145002j:plain

初夏の海岸線に颯爽と現れた485系T18編成(あつみ温泉~五十川)

手はじめに,2015年5月に羽越本線国鉄色485系を見送った際の写真を使って実験してみよう。この旅は神経内科のローテートを終えた金曜の夜に始まったと記憶しており,数少ないメモによると東京2120発・新潟2324着のとき(今も時刻表が変わっていなければ381号?)で新潟入りし,前泊したことになっている。翌日土曜が羽越本線での撮影日であった。しかしその日に乗った普通列車や,食事をどうしたのかなど,ほとんど記憶がない。帰りの新幹線は,20時10分に1階の自由席を確保した旨のやりとりがあるので,おそらくMaxとき348号ということになるのだろう。

f:id:tnclog:20220407144811j:plain

定番撮影地にて。日本海縦貫線のEF81,懐かしい(村上~間島)

f:id:tnclog:20220407144827j:plain

撮影地は変わって,あつみ温泉~五十川。複線電化区間をゆくキハ40

f:id:tnclog:20220407144836j:plain

いわゆる凪と呼ぶのだろうか,空と海が同化しつつある不思議な光景
f:id:tnclog:20220407144856j:plain
f:id:tnclog:20220407144934j:plain
貨物街道,羽越本線特急いなほは世代交代した
f:id:tnclog:20220407144908j:plain
f:id:tnclog:20220407144921j:plain
f:id:tnclog:20220407144951j:plain
初夏の海に寄り添って走る

団体臨時列車は新潟~酒田を1往復するスケジュール。下り列車は光線の都合から後追いになってしまうが,立岩が写る景勝地あつみ温泉~五十川の撮影地を訪れたのだった。幸い天候には恵まれ,この路線らしい風景をおさめることができた。

f:id:tnclog:20220407145014j:plain

見慣れた日本海にさようなら

この後,五十川方面へ歩いた。羽越本線が複線となる数少ない区間だが,その複線化の遺構である暮坪トンネルとたまたま出会ったのだった。現在は地域住民の日常道路として活用されている。

f:id:tnclog:20220407145114j:plain
f:id:tnclog:20220407145129j:plain
複線電化トンネルの横に,旧線のトンネル跡
f:id:tnclog:20220407145025j:plain
f:id:tnclog:20220407145039j:plain
朽ちた曲線美。この"R"はまさしく鉄道のもの

f:id:tnclog:20220407145048j:plain

往時の線形が目に浮かぶ

f:id:tnclog:20220407145058j:plain

現実世界へ

フクロウ氏によると昼はあつみ温泉の駅前で食堂に入り,海岸でアイスを食べたそうだが,まったく覚えていない。午後の上り列車は今川~越後寒川の脇川漁港にて出迎えることにした。小さな湾の入口に国道の脇川大橋が架かっており,海側から漁港を小俯瞰できるという撮影地である。その方面に明るいわけではないが,全国的にもまあまあ珍しいのではなかろうか。架橋は昭和61年度とのことである。

f:id:tnclog:20220407145141j:plain

昼下がりの漁港を駆け抜ける(今川~越後寒川

f:id:tnclog:20220407145157j:plain

国鉄色が彩る日本の風景(今川~越後寒川
f:id:tnclog:20220407145211j:plain
f:id:tnclog:20220407145227j:plain
見納め

いなほの通過時は理想的な晴天だったのだが,残念ながらその後曇ってしまった。こうなったら空はカットして,漁港を強調した構図を組み立てていくしかない。いささか残念だが,成果としては御の字である。

f:id:tnclog:20220407145241j:plain

鉄道は暮らしと共にある(今川~越後寒川
f:id:tnclog:20220407145257j:plain
f:id:tnclog:20220407145311j:plain
海岸線をゆく
f:id:tnclog:20220407145336j:plain
f:id:tnclog:20220407145323j:plain
E653系EF510もすっかり馴染んだようだ

f:id:tnclog:20220407145351j:plain

そのままジオラマになりそうな風景だ(今川~越後寒川

帰りは,越後寒川から普通列車に乗り,村上で乗り換えて新潟へ出たものと思われる。最後に余談。村上といえば,〆張鶴。市内のコンビニには,東京では手に入らないカップ酒が置いてあるので早速購入した(通称ツルカップ)。同社の「雪」「月」「花」のうち,「花」が入っているとのこと。普通酒とは思えぬレベルの高さで,たいへん美味しい。この旅の土産には「月」を買って帰ったのだが,これは比較的大きな店なら首都圏でも難なく手に入るものである。一方「花」は新潟県内のみの流通だと聞く。この酒を飲むたびに,いつも羽越本線を思い出すのであった。

f:id:tnclog:20220407145414j:plain
f:id:tnclog:20220407145424j:plain
旅の思い出