アドリア海沿岸諸国の旅路(7) ヴェローナ(2019.10.25)

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小さくまとまったヴェローナの旧市街

2019.10.25

 

ヴェネツィア(Venezia)観光

鐘楼(Campanile di San Marco

 

Venezia Santa Lucia 1050 → Verona Porta Nuova 1200

FR 9724

 

ヴェローナ(Verona)観光

ランベルティ(Lamberti)の塔,ラジョーネ(Ragione)宮,カステルヴェッキオ(Castelveccio)博物館,サン・ゼーノ(San Zeno)教会

 

ヴェローナ

Sole Hotel Verona

水上都市に二泊の後,旅立ちの朝を迎えた.昨日と同じく美味しい朝食を頂き,最後の観光としてサンマルコ広場の鐘楼を訪れることにした.昼間なら相当に混んでいるはずなのだが,朝の時間帯はすんなり入場できた.

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最後の朝は鐘楼に登る

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水上都市が朝日に煌いている
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リド島の方角は白い朝.離れるのが実に名残惜しい町だ

ヴェネツィアでは,スペクタクル的な面白さを追求することにした.本邦では見ない色彩,造形,そして地勢なので,とても新鮮な感じがある.しかし,望遠レンズを通して静かに細部を観察していくと,これまた繊細な別の表情も色々と見えてくる.ファインダーを覗くたびに出てくる新たな発見とか,無限の切り取りパターンなどという点だけに注目すると,工場夜景に類似しているようにも思われる(撮影経験の浅い自分が言うのも変な話だが).

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Metropoleに別れを告げ,船はすがすがしい朝を駆ける
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カナル・グランデにも,さようなら

荷物をまとめて,チェックアウト.裏手の船着場に呼んでおいた水上タクシーに乗り込み,鉄道駅へ向かう.海上を吹き抜ける風がとても心地よい.サンタ・ルチア駅はヨーロッパらしい横幅が広い造りの終端駅で,本島の西の埋立地にある.屋根やドームはなく,開放感が大きい.ひっきりなしに列車が発着し,自然とソワソワしてしまう.一般にイタリアの鉄道駅には怪しい連中がうろついていることが多いので,気を引き締めて目的の列車に乗車した.

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イタリア国鉄の看板列車,フレッチャロッサ

本日の目的地はヴェローナヴェネト州西部のコムーネである.行程全体のバランスを考えた結果,この町を見出した.以前職場にやってきたドイツ人留学生によると,ヴェネツィア近郊ではパドヴァ(Padova)がイチ押しで,確かにここも捨てがたかったのだが(階段式の有名な解剖学教室がある),翌日の峠越えの利便性を考えて結局ヴェローナに落ち着いたのだった.高速列車のフレッチャロッサ(Frecciarossa),紅の矢で1時間ばかりの快適な旅路である.

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ヴェローナで下車.この列車はミラノまで行くようだ

ヴェローナの玄関口はポルタ・ヌオーヴァ駅.駅周辺には幹線道路が走っているが,その北側,少し離れたところに,蛇行するアディジェ川(Adige)に抱かれるように旧市街が展開している.利便性を第一に考え,1番線からほぼ直結したSole Hotel Veronaに宿をとった.鉄道旅行での宿泊は必然的に駅近となる.東横インくらいの価格帯だったと記憶しているが,実際はそれを上回る上質な設備の宿であった.ビジネス利用も多いと見える.もう部屋に入れるとのことで,スーツケースを置いて早速観光に出かけることにした.駅の観光案内所のようなところで買えるヴェローナカードなるものが結構便利で,主要施設が無料になったり割引になったり,鉄道駅と旧市街とを結ぶバスにも乗れたりする.まずは昼食ということで,『歩き方』で目をつけておいたピザ屋(Pizzeria Du De Cope)を目指す.古代ローマ時代の円形闘技場の近くまではバスでものの数分.そこからぶらぶら散策しつつ,店へ入った.

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散策と昼食

かなり気軽な雰囲気の店で,ピザは安くて美味しいものだった.仕事中の昼休みと思しき人々も散見される.ランチなのだろうが,かなりもりもり食べていた.楽しそうだなあ.食後はエルベ(Erbe)広場を目指して歩く.この町で一番高い建築物とされるランベルティの塔に登ることにした.ピラン,ヴェネツィアに続いて,実に3つ目の鐘楼である.

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鐘楼から町を見下ろす

毎度のことながら,旅行ではいつも高いところに登って写真を撮りたくなる.俯瞰撮影に対する本能的な欲求は,果たしてどこから来るのだろうか.もともと地図は好きである.街歩きのときは常に,頭の中に地図を思い浮かべてこれを固定し,自分をその地図上の動点として意識している.そこで山頂なり塔上なり高いところへ移動すると,疑似的とはいえこの視点を実際に獲得でき,その結果,頭の中に描いていた地図と動点のイメージが,目の前に広がる景色と絶妙に融合していくような感じを覚える.これこそが実は,俯瞰という行為の面白さなのかもしれない.単純に眺めが良い,景色が良い,という要素ももちろんあるのだが,空間内で自分を客観視するという抽象的なプロセスが,登攀という一種の苦労を経て具体的なリアルとして可視化されるところに魅力がある.鐘楼を下りた後は,隣接するラジョーネ宮の現代美術館をさらっと見学した.

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カステルヴェッキオ美術館

夕方はアディジェ川のほとりにあるカステルヴェッキオ美術館を訪れた.14世紀の古城を改装した美術館である.高名な収蔵品も色々あったと記憶しているが,各々の蘊蓄を語れるほど理解していないので,詳細は省く.ルカ・ジョルダーノ(Luca Giordano)の『セレーネとエンディミオーネ』は妙に覚えている.絵を見るなり妻がこの神話の解説を始めたので,へーと思ったものだ.恥ずかしながら全く知らなかった.かなりの展示内容のわりに,訪問者は大して多くない.質素な造りの古城で,中庭が良いアクセントになっていた.ゆっくりと見て回ったら,もうあっという間に夕方である.

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夕刻のアディジェ川と,カステルヴェッキオ橋

カステルヴェッキオ橋で川の対岸に渡った後,夕陽に染まる川沿いの道を西へ歩く.上流側の橋を再度渡って右岸に戻り,最後はサン・ゼーノ教会を訪れた.素朴だが重厚な装いの教会で,なかなか好感が持てた.

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西のファサードには薔薇窓あり
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淡桃色の大理石が使われたロマネスク建築

外へ出るとすでに日は落ち,黄昏の様相であった.旧市街の中心部から2kmほど離れてしまったのでバスに乗って戻ろうとしたのだが,どうやら本日の運行は終わってしまったらしい.仕方がないので30分ほど歩いて旧市街に戻ってきた.夜はこれまた『歩き方』で目をつけておいたOstregheteria Sottoriva23という店に入る.地元民で賑わっているような居酒屋だ.店員はそれなりに親切であった.一応英語メニューもあったが,それでも文字を読むだけではあまりイメージが湧かない.勘も大切にして色々注文.この地方の郷土料理を多く提供する店で,どれも大変美味しかった.唯一,豆を使った何かの料理だけが今ひとつだった.これまでメニュー選びには失敗したことがないという妙な自信があったが,最後の最後で外してしまった.なお,今夜もワインはグラス2杯まで.

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最後の夜が更けてゆく

帰り道はジェラート屋に寄ってアイスを食べ,バスで駅前へと戻ってきた.ヴェローナといえば『ロミオとジュリエット』で有名な町なのだが,ゆかりの地は一切訪れることなく観光が終了した(二人ともとくに興味が湧かなかった).

 

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