ヨーロッパ鉄道周遊(3) フィレンツェ(2015.02.27-28)

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クーポラが見守る花の都

2015.02.27

Roma Termini 920 → Firenze S.M.N. 1051

FR 9518

 

フィレンツェ(Firenze)散策

メディチ(Medici)家礼拝堂,鐘楼,大聖堂,クーポラ(Cupola),ヴェッキオ(Vecchio)橋

 

フィレンツェ

Rex

 

2015.02.28

ミケランジェロ(Michelangelo)広場

ウフィツィ(Uffizi)美術館

3日目はトスカーナ州フィレンツェへ向けて北上する.イタリア国鉄の看板列車,フレッチャ・ロッサ(Frecciarossa)に乗車.直訳すると「紅の矢」になるか.日本の新幹線に相当し,高速専用線をかっ飛ばして316kmを1時間半で結ぶのだから,まあ速い.その名の通り,赤を基調とした車体が誇らしげに広大なテルミニ駅の構内に横たわる.景色はぐいぐいと後ろへ過ぎ去ってゆき,200km/hをこえて走る感覚が久しぶりに呼び覚まされる.

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高速鉄道トスカーナの地へ

フィレンツェは2011年の3月に訪れたことがあるのだった.当時は2日間とも雨が降っていて陰鬱な印象が残ったのだが,今回は幸いにも晴天である.旅行と天候とは切っても切れない関係にあるが,とりわけ海外に関しては晴れているに越したことがない,というのが率直な意見.国内とは異なり基本的に「輝かしい観光地,晴れがましい観光地」しか巡らない性質があるからかもしれない.佐渡島の海岸とか,厳冬の五能線沿線みたいな場所,長期滞在ならまだしも,数日間だけ許された海外旅行ではまず候補地には入らないだろう.

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メディチ家礼拝堂.いたるところにユリの紋章が見える

駅近くのRexという宿に荷物を置き,町歩きに出かける.随所にルネサンスの残り香が漂う花の都だけあって,観光地としても首都ローマより洗練された印象が強い.まずメディチ家礼拝堂に足を運び,その近くのトラットリアで昼食をとる.トスカーナ(Toscana)の料理はとても美味しい.

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テーブルワインとともに昼食

午後は大聖堂と鐘楼を訪ねる.前回は鐘楼に登ったのみであったが,今回はクーポラと合わせて両方に挑んでみる.展望台にせよ,名もなき山にせよ,高い場所があるとそこから俯瞰撮影をしてみたくなる心理とは何なのだろう.もともと地図は好きな部類なのだが,町の構造を把握する際の,その地図を読む感覚に類似した無意識的そして潜在的な思考様式が,俯瞰撮影によってたちまち形として目に見えてくるような面白さがあるのかもしれない.

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サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂

この当時は広角レンズを持っていなかったことが悔やまれる.だいぶ長いあいだ,18-200mmのキットレンズのみで過ごしてきたのだが,実は世界がかなり狭められていたということが今ではよく分かる.息を切らして鐘楼を登りつめる.だんたんと仰角から俯角へ移ることでクーポラが見せる表情もわずかずつ変わってきて面白い.途中から雲が増えてきて,頂上からの景色は薄曇りであった.

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鐘楼を登る途上でクーポラを望む
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すさまじい巨大建築,多面体の複合
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鐘楼の頂上より

鐘楼を下りた後は,聖堂の内部を経由してクーポラに登る.天蓋内面には『最後の審判』の壮大な天井画が描かれている.クーポラは100mほどの高さがあり,鐘楼よりも少し高いようだ.二重構造のドーム内部に張り巡らされた,恐ろしく狭苦しい螺旋階段を登っていく.いやしかし,600年近くも前によくぞこんなものを建てたと本当に思う.

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祈りの場

雲が千切れて,再び晴れ間がのぞいていた.町の一部がスポットライトを当てられたようになっており,これはこれで面白い.鉄道撮影では「まだら」「曼荼羅」などと形容されしばしば忌避される現象であるが,町並みに関してはむしろ凹凸や陰翳が際立って見えるからその限りではないかもしれない.

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花の都を眺望.サンタ・クローチェ教会とヴェッキオ宮も見える

フィレンツェ観光のハイライトとも言える場所であった.長い階段を再び下りて外へ出ると,辺りはすでに斜光線に包まれ始めていた.たしかに,まだ2月下旬である.夜の帳が下りるのはそれなりに早いのだ.

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外へ出ると,大聖堂の威容が夕刻の日差しと青空に妖しく浮かび上がっていた

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天を突く鐘楼

黄昏時にかけてはヴェッキオ(Vecchio) 橋近くの街路を逍遥する.宝飾品やネクタイ,革製品を扱う店などが多く,どれも洒落ていてセンスが良さそうだ.ユリの紋章が入った青いネクタイを土産に買ってみた.

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雑踏,ヴェッキオ橋

町を横切るように悠々と流れるのはアルノ(Arno)川.橋を行き交う人々は様々な表情を見せる.別の同級生の旅行団3人も今夜フィレンツェに滞在していることが分かったため,ヴェッキオ宮の前で落ち合って我々6人と夕食を共にした.遠く離れた異邦での再会である.話を聞くと,すでにヴェネツィア(Venezia)を回ってきたとのこと.明日の我々の目的地である.

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斜陽のアルノ川

翌朝は日の出前から早起きし,赤紫色の朝焼けを眺めながらU氏とともにアルノ川対岸のミケランジェロ広場へ向かった.計画段階から目をつけておいた場所で,晴れれば順光の朝日の中,この花の都の姿を一望できる.

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朝焼け

広場はそれなりの高台にあるため,最後は急坂を登る.最も気温が下がる時間帯であり,息は白い.

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町はまだ眠っているかのようだ

もう日の出の時刻は過ぎているはずなのだが,意外にも雲が厚いようで,なかなか光は差し込まない.しかし粘ること1時間,ついに念願の絵が撮れた.

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燦然と輝く大聖堂

この黄色っぽい光がたまらない.町の色彩も同系統で絶妙に調和しており,難解な蘊蓄や文脈は抜きにして,景色だけでもただ純粋に美しい.

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一日のはじまり

丘を下りた後,全員と合流する.午前中はウフィツィ美術館を探訪.ここもバチカン同様,事前予約券を用意していたものと記憶しており,入場はスムーズであった.ヨーロッパの主要な美術館ではしばしば経験することだが,超有名絵画がそこら中に展示してあって感覚がおかしくなる.美術検定をもつS氏の解説つきで要所を回る.

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ヴィーナスの誕生』と『春』
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『ひわの聖母』と『長い首の聖母』

陽はだいぶ高くなってきた.今日は午後の列車でフィレンツェを去り,ヴェネツィアへ向かう予定となっている.

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ヴェッキオ橋.早朝と白昼で色温度を比較

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